特殊清掃業者に支払う費用は誰が負担するのか?

孤独死などでの急な入居者の死亡時には、特殊清掃の費用が必要になる場合があります。

特殊清掃は、非常に高額な費用がかかることがあり、一般社団法人日本少額短期保険協会が毎年発表している孤独死現状レポート(参考:一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会 第7回孤独死現状レポート)によると、孤独死の特殊清掃の平均費用は38万1,111円であることがわかっています。

では、この高額な費用は誰が負担するのでしょうか?

結論としては、基本的には借り主が費用を負担することが一般的ですが、ケースによっては大家が責任を負う場合もあります。

本記事では、誰が特殊清掃の費用を負担するのかについて詳しく説明しています。
また、特殊清掃の費用や相場やこれらの負担を軽減するための方法についても解説します。

特殊清掃業者に支払う費用は誰が負担するのか?

賃貸住宅において、特殊清掃の費用を負担する人は、責任のある順番によって決まります。

特殊清掃の負担順位

  • 連帯保証人
  • 法定相続人
  • 物件の持ち主

最初に負担するのは連帯保証人です。彼らは借り主が特殊清掃費用を支払えない場合に代わって責任を負います。

次に、連帯保証人が負担できない場合は法定相続人が負担します。彼らは亡くなった借り主の遺産を相続する立場のため、その中から特殊清掃費用を支払うことが求められます。

最後に、法定相続人が何らかの理由で負担できない場合は、物件の持ち主が負担することがあります。

それでは以下で、①連帯保証人、②法定相続人、③物件の持ち主の三者が負担する場合についてそれぞれ見ていきましょう。

①連帯保証人の負担

特殊清掃の費用は通常は借主が負担します。ただし、借主が孤独死などでなくなってしまった場合は契約時の連帯保証人に負担義務が発生します。

連帯保証人とは、契約上の保証人であり、借主が契約に違反した場合や負担できない場合に備えて責任を負う役割を担っており、借主の債務や義務を補完し、借主の不履行時に代わって責任を負うことが求められます。

そのため、借主が負担できない場合には連帯保証人が責任を負って、特殊清掃の費用を負担することになります。

②法定相続人の負担

連帯保証人が負担できない場合、次に負担するのは法定相続人になります。

法定相続人とは、亡くなった借主の遺産を法律に基づいて相続する立場にある人々のことを指し、配偶者と血族(子供、両親、兄弟・姉妹)です。

なぜ、法定相続人が特殊清掃の費用の負担をするかというと、亡くなった借主が負担すべき費用は所有していた負債の一部と見なされるため、連帯保証人が負担できない場合や特殊清掃費用が借主の債務として残っている場合には、法定相続人が費用の負担を求められることがあります。

③物件の持ち主の負担

最後に、ご遺族が相続放棄した場合、法定相続人が特殊清掃の費用を負担する義務がなくなります。相続放棄は、遺産を受け継ぐことを辞退する意思表示であり、法的には相続人の権利や義務も放棄されます。その結果、特殊清掃の費用を負担する義務も法定相続人から外れ、大家さんが負担する必要が生じる可能性があります。

また、故人の死因が病死または自然死の場合、基本的には大家さんが特殊清掃の費用を負担する割合が多くなります。なぜなら、自死とは異なり、借主が故意に汚したということができないからです。病死や自然死は誰にでも起こり得ることで、借り主に責任はないとされています。(※ケースによっても議論が別れる場合がありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。)

孤独死の特殊清掃にかかる費用相場とその内訳

次に、特殊清掃の費用相場と、その内訳を見ていきます。
下記の表は、「協会孤独死対策委員会」各社が持ち寄った孤独死支払案件データの平均損害額と、最大損害額についてまとめた表になります。

項目金額
平均損害額381,111円
最大損失額4,546,840円
(出典:第7回孤独死現状レポート 一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会)

この表を見ると、平均でかかっている費用を表す平均損害額が約38万円であり、最大でかかった費用は454万円ということがわかります。ケースによってばらつきはありますが高額の費用がかかることがわかります。

では、この費用はどのような内訳になっているのでしょうか?様々なケースがありますが、特殊清掃という作業を分けると一般的に下記の3つの費用に大きく分類されます。

特殊清掃における3つの費用項目

  • 特殊清掃
  • 遺品整理(残置物の撤去)
  • 原状回復リフォーム

それでは、上記の3つの費用項目についてそれぞれ解説していきます。

費用①特殊清掃

孤独死の現場で、特に夏場などに発見が遅れてしまった場合は、特殊清掃が必要になります。特殊清掃とは、通常の清掃とは異なり、特殊な機器での臭気を除去などを要する専門性の高い清掃を指します。

具体的には、下記のような作業が特殊清掃で行われる作業になります。

体液や血液などの処理
ウジ虫・ハエなどの除去
染みついた腐敗臭の消臭

現場の状況によって変わってきますが、遺体の腐敗がひどい場合などは、病原菌や有害物質の除去・処理が必要となります。この場合は、経験のある特殊清掃の専門家が適切な衛生管理を行い、作業を行わなければなりません。

また、体液が床や壁に染み込んでいる場合は、簡単には消臭ができません。この場合は、床や壁を剥がす作業や、特殊な機器を使用してのオゾン消臭で根本から臭いを取る必要があります。

費用②遺品整理(残置物の撤去)

遺品整理は、亡くなった方の遺品や残置物を整理し処理する作業であり、お部屋の清掃と合わせて必ず行わなければならない作業になります。残地物は相続の対象となるため、相続を放棄しない場合は、大家さんや管理会社が勝手に処分できません。まずは、相続人に作業を依頼しましょう。相続放棄があった場合は、相続財産管理人の専任手続きを行い、彼らに処分を任せるのがおすすめです。

遺品整理の主な作業内容は以下のようになっています。
仕分け
不用品の回収
家財の搬出
整理後の清掃

費用③原状回復リフォーム

原状回復リフォームは、遺体の腐敗などがひどく、体液の染み込みが床や壁の中にまで及んでしまっている場合などに行われます。

具体的な作業内容は下記のようなものがあります。
壁紙や塗装の修繕・張り替え
床の修繕・張り替え
ドアや建具の修繕・交換
水回りの修繕・交換(洗面台、トイレ、浴槽など)
配管や給排水設備の点検・修繕・交換

第7回孤独死現状レポートによると、孤独死の発見までの平均日数は18日となっています。夏場に、これだけの日数が経過すると遺体の腐敗が進み、リフォームが必要になることが多く、それに伴い掛かる費用も莫大になる傾向があります。

特殊清掃費用の負担を軽減する2つの方法

ここまで見てきた通り、特殊清掃は多額の費用がかかります。
では、この費用をなるべく安く抑える方法はあるのでしょうか。


ここでは下記の2つの方法をご紹介します。

特殊清掃費用の負担を軽減する2つの方法

  • 孤独死の発見を早める
  • 保険制度の活用

それでは、2つの方法についてそれぞれ解説していきます。

負担軽減法その1:孤独死の発見を早める

まず最初に、孤独死の発見を早めるというアプローチから解説していきます。孤独死の発見を早めると、遺体の腐敗が軽度で済み、結果として、原状回復のリフォームが不要になったり、作業量が減ったりして費用が削減されることがあります。では、孤独死の発見を早めるためには具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?

下記では、①定期的な連絡や訪問と、②スマホアプリの活用について紹介します。

定期的な連絡や訪問

まず第一に、孤独死のリスクがあると判断される入居者や近隣の方々とは、定期的な連絡や訪問を行うことが重要です。地域の回覧板の文化を継続したり、長期間連絡が取れない場合や異変がある場合には、管理会社などに連絡し、速やかに確認することが必要です。

アプリの利用

次に、①が何らかの理由でできない場合、アプリの活用もおすすめです。「Peaceful Line-安否確認アプリー」はご家族の安否確認をスマホで自動で行うサービスで、スマホの使用履歴などから、簡単に安否確認ができるようになります。

主な機能は下記のようになっており、高齢者の方でもスマホにインストールするだけで使うことができるのでとても便利なアプリになっているので、一人暮らしのご高齢者などはご家族の方と一緒にインストールしておくことをおすすめします。

Peaceful Line-安否確認アプリ-の機能

  • 緊急連絡/安否確認通知の受信:ご家族が、設定時間以上アプリの操作がない場合に、各利用者宛に緊急連絡メール/安否確認の通知を受け付けることができます。
  • メッセージ連絡機能:ご家族と安心してメッセージのやり取りを行うことができます。
  • 位置情報確認機能:ご家族の位置情報をMAPで確認することができます。

利用者自ら通知したりする必要はなく、「スマホを使うだけ」でOKです。基本的には無料で使うことができますが、さらにサポートを強化したい場合は有料のプレミアムプランで緊急時にスタッフが駆けつけることもできるため、遠くに住んでいて近くで見守れない家族も安心です。

負担軽減法その2:保険制度の活用

孤独死保険には主に下記の2つの種類があります。

2種類の孤独死保険

  • 入居者型
  • 家主型

1つは「入居者型」と呼ばれる保険で、入居者自身が、自分が孤独死してしまった場合に備えた保険が「入居者型孤独死保険」になります。

もう1つは「家主型」と呼ばれる保険で、大家さんが契約者となり保険料を負担します。この保険は賃貸住宅の居室内で入居者が死亡した場合に、大家さんが被る損失を補償するものです。

これらの2つの保険は、被保険者や補償内容などに違いがあり、各保険会社の商品ごとにも異なる特徴があります。そのため、比較や検討を行い、自身に最適な保険を選ぶことが重要です。

それでは、下の表で「入居者型」と「家主型」の保険を概観し、それぞれについて解説していきます。

入居者型家主型
被保険者入居者家主・管理会社
補償内容・遺品整理費用
・原状回復費用
・遺品整理費用
・原状回復費用
・家賃損失
メリット・自分が孤独死した場合
遺族の費用負担を補償することができる
・原状回復費用の補助
・遺品整理費用の補助
・家賃補償
デメリット・保険料の負担が増える
(ただし、安いものでは月額200円程度〜)
・大家さんの支出が増える
・基本的に一棟丸ごとでの加入
(ただし、1戸あたりの保険料は数百円程度)
注意点・単独で加入できる孤独死保険の多くは
1年~2年の短期保険のため期限切れに注意
・補償される期間・補償額の上限が
保険によって異なるので、要チェック
<入居者型と家主型の孤独死保険の比較>

入居者型保険のメリット・デメリット、おすすめの人

「入居者型孤独死保険」のメリット:

自分の死後、遺族に迷惑をかけたくないと考えている方にとって、安心を得られる点が大きなメリットです。
孤独死が発生した場合の費用(遺品整理費用、原状回復費用、家賃損失)負担を遺族が補償することができます。

「入居者型孤独死保険」のデメリット:

毎月の保険料の負担が増えることがデメリットです。
ただし、保険料は月額200円程度から選ぶことができます。


「入居者型孤独死保険」がおすすめの人:

賃貸住宅で一人暮らしをしている人
持病がある、または高齢の人
自分が孤独死した場合に遺族に負担をかけたくない人

ただし、普段付き合いのない親族や縁者に迷惑がかかってしまうような場合は、加入しておくことで遺族の負担を軽減できます。

家主型保険のメリット・デメリット、おすすめの人

「家主型孤独死保険」に加入するメリット:

・孤独死が発生した場合に、家賃損失や空室の拡大といった経済的損失に備えられる
・遺品整理費用や特殊清掃費用を負担する遺族が見つからず、家主自身が負担しなければならない費用を保険が補償してくれる

「家主型孤独死保険」に加入するデメリット:

・戸単位ではなく、一棟単位での保険加入になるので、賃貸住宅の規模や所有物件数によっては、年間保険料が、十数万円以上と高額になる場合がある

「家主型孤独死保険」の加入がおすすめの人:

所有する賃貸住宅に、一人暮らしの高齢者が多い場合
一人暮らし向けの賃貸住宅を多く所有している場合

高齢者は若年層と比べて病気やリスクが高いので、一人暮らしの高齢者である場合は特に孤独死のリスクを考慮する必要があります。また、昨今では入居者が比較的若い場合でも、病気や自殺による孤独死の可能性は決して少なくありません。

上記のようなケースに該当する場合は、「家主型孤独死保険」の加入を検討することをおすすめします。保険によって経済的なリスクを軽減することで、賃貸住宅の所有者・管理者はより安心して事業を行うことができます。

まとめ

本記事では、孤独死に伴う高額な特殊清掃費用の負担者や費用相場、さらには負担を軽減する方法について詳しく解説してきました。

日本の高齢化が進む中、孤独死問題はますます深刻化していくことが予想されます。現在高齢者の方やその家族だけでなく、若者を含めた一人一人が将来に備えて、この問題に対する準備をする必要があります。

本記事で紹介した通り、特殊清掃は非常に高額であり、遺族や物件所有者にとって大きな経済的な負担となり得ます。しかし、誰が負担するのか、費用の内訳はどうなっているのかを知ることで、心の準備をすることができます。

また、特殊清掃費用の負担を軽減するためには、早期発見や保険制度の活用が重要で、孤独死の早期発見には、周囲の人々や近隣住民の協力やITの力を使うのがおすすめです。孤独死保険などの制度を活用することで、特殊清掃の費用負担を軽減することができます。

日本は、将来的には高齢化がさらに進み、孤独死問題はより深刻化していく可能性が高いので、自分の身に何が起きても良いように、今からできる準備を個人個人が進めていくことが重要です。

もし、特殊清掃や遺品整理のことで何かご不安なことがありましたら、専門業者である弊社にお任せください。下記から、お気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者:谷澤 直樹

株式会社FIX 代表取締役
▶資格
・特殊清掃技能士歴10年以上
▶経歴
・特殊清掃案件にこれまで1,000件以上携わった特殊清掃のプロ。
▶メディア出演
・「不動産投資の楽待 (らくまち)」YouTube

会社名株式会社FIX
事業所名トータルクリーンアップ
代表者谷澤直樹
住所〒226-0024 神奈川県横浜市緑区西八朔220番
電話番号045-271-1545
メールアドレスtanizawa-cleanmeister@e-mail.jp
URLhttps://total-clean-up.com
古物商許可番号神奈川県公安委員会(令和5年8月4日移動) 第543861902100号

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