特殊清掃員が解説する、オゾン脱臭の豆知識

オゾンを用いた脱臭方法は強烈な臭いを取り除けるため、孤独死などの特殊清掃現場で使われます。その中で、強烈な臭いを取り除くためには適切な温度設定が必要であったりと綿密さが要求されます。

今回のT.C.U谷ちゃんのコラムではオゾンによる脱臭の仕組みや我々特殊清掃員が用いる方法についてをご紹介します。

目次

オゾンとは?しくみと効果について

まず、なぜオゾンが脱臭に用いられるのか。オゾン脱臭のしくみと効果について解説します。

オゾン脱臭のしくみ

オゾンを化学式に表すとO3で酸素分子にO2にもう一つの酸素分子が結びついて形成される気体となります。

オゾン分子O3の結びつきは酸素2と比べるとかなり不安定であり、自然に分離して酸素O2に戻ろうとします。そして分離した酸素原子Oが臭いや菌などの有機物質と融合して酸化し、臭いの物質が破壊されます。

破壊した後に残る物質はオゾンO3から分離した酸素O2のみになり、有害な物質を出さず安全に脱臭できるという仕組みになります。空気清浄機とは異なり、臭いの元を取り除くことが出来る脱臭方法となります。

脱臭効果のある臭い

臭いを根源から取り除くことが出来るオゾンは、あらゆる種類の臭気に効果があります。オゾンで脱臭効果が見られる主な臭いは以下、

  • 死臭
  • カビ臭
  • 生ゴミ臭
  • タバコ臭
  • 排泄物の臭い
  • 排水溝の臭い など

ニンニクや発酵製品、魚の臭いにも効果的です。反応する成分としては、アンモニア2NH3や硫化水素H2Sなどが該当します。

アンモニア2NH3はオゾンO3に近づくことで、窒素N2と水H2Oの3つに分かれます。また、硫化水素H2Sは硫黄Sと酸素2と水H2Oに分解されるため臭いを消し去ることが可能となります。

悪臭はオゾンから分離した酸素原子と反応しやすく、人が不快に感じる臭いの多くはオゾン脱臭で取り除くことが出来ます。

脱臭以外の効果

オゾンには脱臭以外にも細菌やウイルスの除去、虫の忌避、花粉の不活性化などの効果があります。オゾンは殺菌力が強いため、菌を不活性化させることで汚染現場等での作業時の感染症リスクを抑えることが可能です。

また、ダニやゴキブリなどの害虫が分泌するフェロモンを破壊できるため、虫を寄せ付けない忌避効果が期待できます。さらに、オゾンは花粉の細胞膜を破壊して不活性化させられるので、花粉を減らす役割も担います。

ただし、メインは脱臭であり、これらは副次的な効果にすぎません。害虫を駆除する場合は殺虫剤を使ったり、花粉症がひどい場合には空気清浄機を使ったりなど、状況に応じて適切な対応を取りましょう。

孤独死の強臭を取り除くオゾン脱臭施工

ここまではオゾン脱臭のメカニズムとオゾンの効果について解説しましたが、孤独死現場の強烈な臭いを取り除くためには、ただただオゾンを生成させるだけでは高い効果を望めません。

オゾンはそもそも、知識のない方が真似をして扱うと大変危険な物質でもあります。ここでは、私共、特殊清掃員が用いるオゾン脱臭の方法を解説しますのでご参考までに。

特殊清掃の作業工程の例
1. 消毒(一次除菌/一時消臭)
2. 汚染物の除去/家財の撤去
3. 体液痕の除去・洗浄
4. 体液が付着した床材や壁紙の撤去
5. その他、内装解体
6.全体を含めた除菌清掃
7. オゾン脱臭
特殊清掃の作業工程の例

OST法

一般的なオゾン脱臭では、部屋の隅々に染みついた孤独死の強烈な臭いを取り除くことは極めて困難です。そこで特殊清掃の最終段階にてOST法(オゾンショックトリートメント)を用いて脱臭します。

OST法は高湿度で効果を発揮しやすいオゾンの特性を活かした方法で、単に機械を使用するのみではなく、適切な温度と湿度を調節し、大風量で発生させたオゾンの濃度を維持しながら供給し続けることで完全脱臭する方法です。

この手法でカギとなるのは、大量のオゾンを大風量で発生させる機材を使う必要があります。さらに適切な環境を整えて高濃度を維持し続けるためには専門的な知識と経験がなければ簡単にはできません。

温度と湿度の調節

窓を閉め切った状態で消臭効果がある薬剤を部屋全体に噴霧し、限りなく湿度を高めます。夏場は高温になりすぎないように冷風機を併用します。

機材の設置

使用する機材は業務用のオゾン発生器とサーキュレーターになります。臭いの元に近い部分を中心に設置し、空気よりも重いオゾンを部屋全体に行き渡らせるようにサーキュレーターの風向きを調整します。

オゾン発生器の稼働

あらかじめ通気口や窓のサッシなどの隙間は養生を施して密閉空間を作り、オゾン発生器を稼働します。人体に有害となるほどのオゾン濃度になるため、稼働中は無人状態にします。

換気→洗浄→オゾン脱臭

数時間のオゾン脱臭を行った後は、換気をして空気を入れ替えます。臭気を確認しながら薬剤を用いて建具、壁、床を洗浄し、再度オゾン発生器を稼働する、という一連のプロセスを繰り返し行います。

期間

脱臭にかかる期間は部屋の状態や臭いの強さによって異なります。OST法を使った脱臭効果は強力なため、場合によっては数日で消臭が完了します。

オゾン器の稼働→換気→洗浄→温度・湿度の調節→オゾン器の稼働というサイクルを、臭いがなくなるまで数日間繰り返し行います。

しかしながら、どんなに強い臭いであっても嗅ぎ続けていると次第に慣れてしまうものですので、時に臭気計を使って化学的に計測し確認することも重要です。また、長期間に渡る場合はスタッフを替えて臭いを確かめると、効果を確認しやすくなります。

まとめ

どんなに強力な脱臭効果があっても、臭いが残ったり、そもそもオゾン脱臭だけでは臭いが消えないケースもあります。このような場合には、内装解体、消臭コーティング施工で対処します。

脂を含んだ体液は壁や床に染み込むと洗浄してもオゾン脱臭をしても取り除くことが困難です。そのため、ベニヤ板や石膏ボードなど体液が染み込んだ部分を取り除く内装解体を行います。

消臭コーティングは臭いを封じ込める特殊なコーティングを施すもので、建材を撤去せずにそのまま利用することが可能であるため、コンクリートや基礎などの解体不可の箇所で用いられます。

以上になります。ではまた!特殊清掃員、谷ちゃんでした。

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この記事の監修者:谷澤 直樹

株式会社FIX 代表取締役
▶資格
・特殊清掃技能士歴10年以上
▶経歴
・特殊清掃案件にこれまで1,000件以上携わった特殊清掃のプロ。
▶メディア出演
・「不動産投資の楽待 (らくまち)」YouTube

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